日本ではリラクゼーションのイメージが強いアーユルヴェーダですが、もともとインドやスリランカでは医療として発展してきたもの。現地には医科大学を経て国家資格を取得したドクターが存在し、 病気治療を行なっています。
それらの治療には、通い型もあれば、連日かけて入院型の治療を受ける「パンチャカルマ」というものもあります。
入院型の治療法は、浣腸によって薬剤を投与したり、下剤を飲ませたり、吐かせたりなどして、3〜4週間かけて身体から病気の素を外に排出し、身体構成要素のバランスを整える、というコンセプトで、「浄化療法」とも言われます。患者の症状、体質、体力など、状態に合わせて、パーソナライズされた治療法が組み立てられます。
さて今回は、実際にインドのアーユルヴェーダ病院に滞在し、本格的な治療を受けた方の体験日記をお届けします。寄稿してくださったのは、京都にある南インド料理教室の講師として有名な「桃草舎」のMOMOさん!
MOMOさんプロフィール
桃草舎(とうそうしゃ) 主催: 井上 由貴 / MOMO instagram
異国料理に魅せられ、様々なレストランの厨房に入って働くうちに大好きなハーブや薬草を使うインド料理と出会いのめりこむ。インド料理店で働いたのち、毎年1~2回はインドへ通い、現地の家庭やレストランの厨房などに入って料理修行を続けている。アーユルヴェーダの勉強も続け、インド/日本にてドクターの元学びを深めている。2020年に念願のアトリエを嵐山にオープン。レッスンは月に10回以上開催。登録メンバー数は1,600人以上。南インド料理をはじめとする各地のインド料理、アーユルヴェーダを伝えている。
MOMOさんが今回滞在したのはインドのマハラシュトラ州ワゴリにある病院B.S.D.T.’s Ayurved Hospital & Research Centre。広大な敷地内には入院病棟、薬草園、医療大学、研究所などもあります。(アタルバの薬草オイルを作っている場所でもあります。)こちらの病院の院長「サダナンダ・サラデシュムク博士」は、インド屈指の脈診の名医として知られています。
MOMOさんは今回、NPO法人ヴェーダビージャムのサポートを利用されてパンチャカルマに行かれたそうです。また、こちらの病院は元々、サトヴィックアーユルヴェーダスクールの佐藤真紀子先生が長年にわたって通い、研鑽を積まれた場所でもあります。こちらの病院で治療を受けてみたいけど、1人では不安、、、という方は、サトヴィックアーユルヴェーダスクール主催のパンチャカルマ体験プログラムが年に2回開催されていますので、ホームページやインスタグラムをチェックしてみてください。豊富な知識をお持ちの先生が通訳として入ってくれるのでとても安心です。
また、サトヴィックさんの体験プログラムの日程が合わない場合や、1人もしくは友人と少人数で行きたい場合には、ヴェーダビージャムのオンラインサポートを受ける、という方法があります。
サトヴィックアーユルヴェーダスクール
NPO法人ヴェーダビージャム
入院型のアーユルヴェーダ治療(パンチャカルマ)を受けてみたいなとお考えの方、ぜひ参考になさってみてください。それでは、MOMOさんのパンチャカルマ体験記をお楽しみください!
Table of Contents
MOMOさんのパンチャカルマ体験記-検査〜前処置
0日め〜検査と問診
今私は、マハラシュトラ州ワゴリにあるパンチャカルマ病院に来ています。 7/12〜3週間のパンチャカルマの様子を日記として残していこうと思います。
パンチャカルマは、7年前に2週間受けたのが初めてで、今回は2回目。
———-数日前よりお腹を壊したまま病院に到着しました。(いつもインドに来ると4日〜5目にこうなります、おそらく水が原因) お腹ピーピー、治療が出来なかったらどうしようと不安があり(治療に必要な時間が確保出来ないとパンチャカルマが中途半端で終わることになる)、また初めての病室に緊張してなかなか眠れず、睡眠は2時間ほどしかとれませんでした。
0日目は治療前の検査の日。 日本にいる間にサダナンダ先生の脈診を受け、その後かなり細かい問診票記入とビデオ面談があり、インドに来る前に既に大体の事は把握されているのですが、ここでさらに細かい質問や触診に続き、血液検査、検尿、検便があり、さらに必要であれば心電図、エコーやX線などが追加されます。
この病院は古典に沿ったアーユルヴェーダの治療が出来るのはもちろん、近代的な機器も揃っていて患者としてはとても心強い。無事、全てパスしたのでホッとしました。
パンチャカルマは体の生理機能そのものを触るので、一人一人の体質や病状の原因をしっかりと掴む必要があります。今回は治療方針を決定するにあたりサダナンダ先生が病院にいらして下さり、最終チェックも入りました。
私の場合はなにか変更があったようです。
私のお腹を触って
「みんな、これがウーシュナ(熱性)だ、触ってみなさい!」
と学生の皆さんにも触らせていました。(ここは大学病院なのです)私ってやっぱり熱いのね…。
今回のメンバーはみな重篤な病気の人はいなくて、それぞれの主訴は便秘や関節痛などなど。自分だけでなく、他の人の変化や治療内容も見ることが出来るのが団体のいいところですね。
明日からいよいよ治療です!朝ごはんのほうれん草パラタがびっくりするほど美味しかったです。
パンチャカルマ日記 1日目 (前処置)
いよいよ治療がスタート。
朝食の後、部屋に隣接するトリートメントルームでドクターとセラピストの2人がやってくれます。
今日はこの3種類。
⚫︎スネーハナ(オイル塗布)-全身にオイルを塗り込むこと。皮膚からオイルを吸わせて身体を緩めて薬草に働いてもらいます。
⚫︎スウェーダナ(発汗)-蒸気による微細な熱を身体の奥まで届けて発汗・代謝をかける事で、さらに全身にオイルを巡らせます。
⚫︎アヌアサナ バスティ(少量のオイル浣腸)-「スモールバスティ」とも呼ばれるもので、薬草オイルを50mlほど浣腸します。これは寄生虫を出す為のもの。 (結構、日本人には寄生虫いるらしい。)
これは全員同じ処方なのでここのやり方として、まずはヴァータをケアして寄生虫を出す事が、これからの治療の前処置のようです。
アヴィヤンガではなくスネーハナなので、全身30分くらいの簡単なものだけど、十分心地いい。私のオイルはマハナラヤナでした。おそらく腰痛対策のようです。 他の人のオイルと症状を見比べたり出来るのが、団体で来たメリットだと思いました。
病室の横がこの部屋専用のトリートメントルームになっているので移動も問題なく、ドクターとセラピストさんが2人セットで施術をしてくれます。 とても丁寧な施術で、幸せな心地でした。
オイルエネマについて
スネーハナ(オイル塗布)とスウェーダナ(発汗)のあとは、スモールバスティとも呼ばれる少量のオイル浣腸。 寄生虫を出す目的で、 このパンチャカルマ病院では入院患者全員が最初の3日間これを受けます。「いつの時代?日本人なんだしいるわけないでしょー」 と思いますよね。 これが、結構いるんです。
先生が仰ってましたが、寄生虫やその卵は、実は私達の暮らす環境のそこらじゅうにいるそうです。例えば電車の吊り革、エスカレーターの手すり、公共トイレ…。 目に見えないほど小さなものらしいのですが、これがいるせいで身体は様々な影響を受けます。
まず、ベタベタした粘液が体内に増える為、消化力が落ち、カパやアーマ(毒素)が増える原因になります。寄生虫は甘い物を好む為、糖質を欲するようになり、糖質を取ることで寄生虫は増え、カパ・アーマは増えて…と悪循環になるわけです。 日本のギョウ虫検査では出ないことがある為、こうやってオイル浣腸によって処理するわけです。その後検便も行われるので寄生虫の有無も確認できます。
今回使用したオイルは、 イェティシマドゥ ニルグンディ ニーム の3種類のオイルを混ぜて使っていました。 人によって混ぜる比率が違うようだったので、体質によって分けているのかもしれません。 量は50mlくらいで、必ず温めて使います。
毎朝オイル塗布と発汗などのトリートメントが終わった後に部屋の自分のベッドに戻り、ドクターがやってくれます。 温かいオイルがフワ〜と入ってくるのは、なんとも気持ちがいいのです。 そして、1時間くらいそのままベッドで微睡む時間が至福。 発汗もした後なので、まるで南国のビーチでうとうとしているような、サウナの後の休憩所のような気持ちです。
このオイルはしばらくするとトイレの時に出てきますし、出てこなくても大丈夫。 人によっては身体が吸収してしまうこともあります。
ちなみに、パンチャカルマは担当になるドクターやセラピストなど全て女性には女性がついてくれますし、浣腸はすぐに慣れます。 このアヌアサナバスティは、以前入院した所ではやってくれなかったので、必ずやるものではないようです。
午前中にこれらのトリートメントを行って、後はひたすらゆっくり〜、と思いきや回診やトリートメントのスケジュール確認などで意外と忙しい。
今日は、サダナンダ先生に診てもらえて今後の治療方針が固まったようです。お薬も処方され、明日から人によって午前中のトリートメントにも違いが出てきます。
まだまだみんな元気なので、ご飯中は賑やかです。
パンチャカルマ日記 2日目(前処置)
夜9:30にストンと寝て5:00にバチっと目が覚める気持ちのいい1日。今日から基本のトリートメントにクシーラダーラとナビバスティが追加となりました。これらのトリートメントは1週間単位で行われるらしく、今日から7日間はこの施術が行われる模様。*スネーハナ(オイル塗布)、スウェーダナ(発汗)、アヌアサナバスティ(少量のオイル浣腸)も継続して行われます。
ナビバスティはナビ(おへそ)にバスティ(小麦粉で作ったドーナツ状の穴に熱いオイルを溜め置く)治療です。 消化吸収力を強化し、過敏性腸症候群、鼓腸、食欲不振、便秘、腹部不快感などの消化器症状の緩和に役立ちます。 私の場合、使用したオイルはhingawadi thailam(ヒングなどを使ったごま油)なので、ガスやヴァータの調整に良さそうです。 お腹を壊して腸の調子が悪いので処方されたと思います。 何回もオイルを取り出して、温め直して入れてくれるので、おへそから体内にオイルがジワ〜と入っていく感覚がありました。これは家でもできますね!熱いオイルをおへそのあたりに塗るだけでもいいと思います。
シローダーラは、シロー(頭)にダーラ(液体を一定速度で線状に垂らす)で、有名なのはオイルのシローダーラですが、私に処方されたのはミルク! ミルクは冷性、油性、重性で身体を滋養します。ごま油は温性なので、熱性トラブルの多い私にはミルクがよいというわけです。
ここには牛舎があって原種のギールという種類の牛さんがいて良質なA2ミルクがとれます。それはもちろんチャイにして飲んだり、ギーを料理に使ったりもしますし、こうやって治療にも使われるのです。
なんて贅沢なのでしょう。 しかも、施術中に頭をなでなでしてくれて、なんだかジワ〜と心に沁みました。 オイルをたっぷり身体に吸わせて、頭には温かいミルクを染み込ませ、おへそには熱々のヒングオイル。そして腸内には薬草たっぷりのオイルが注入されました。 終わった後は、視界が開けた感じ。クリアに見えるし、心の澱が取れたようなリフレッシュ感があります。
今日はもうパソコンも携帯もあまり見ないで、外の緑を見て過ごそうと決めました。施術後の体は冷やしてはいけないので、洗髪は2日に1回と決められています。だから私はしばらくミルクの香りがします。
ランチに出てきたのはキャベツと人参のコフタ!コフタがアーユルヴェーダ病院で!とびっくり。なぜならいつも先生が講座で「調理がシンプルでないのでよくない調理例」として挙げるひとつがコフタだったから。
でも食べて納得。揚げてなかったのでした。
通常のコフタは、
①素材を茹でて潰す
②団子にして揚げる
③クリーム入りの濃いソースで煮込む
とたくさんの工程を経ている為素材の持つエネルギーが失われた上に消化に重いものになってしまう。でも、ここのコフタはムング粉に野菜を入れた生地をグレービーでさっと煮込んだような軽いもの。
グレービーはクリームなど使わずに、マハラシュトラならではのゴーダマサラの効いたシンプルなもので、セミドライに仕上げてある。
これにダールなどもセットで出てきて、プロテインもたっぷり取れるし消化に軽いのに食べ応えもあるし、なるほどうむむ。。。と唸ってしまいました。
まさか病院でこんな体験が出来るとは思わなかったです。
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今日のトリートメント
⚫︎スネーハナ(全身オイル)
⚫︎スウェーダナ(スチーム発汗)
⚫︎ナビバスティ(おへそにオイルを溜める) ✖️1日目
⚫︎クシーラダーラ(牛乳を頭に垂らす)✖️1日目
⚫︎アヌアサナバスティ(少量のオイル浣腸)✖️2日目
パンチャカルマ日記 3日目(前処置)
今日はサダナンダ先生の診察がありました。治療が順調に進んでいるか、身体の変化に対応させて細かく施術内容を調整してくれます。(この日の診察で、明日以降、私にはアシュチョータンという目に牛乳を入れる処置が追加になったとのこと。)
頭にミルクを垂らすクシーラダーラのおかげで、肌がピカピカになってきました。赤みが取れて白さが出ています。
悩まされていたピッタ性の不調
今回私は身体の中の熱(ピッタ)を抜きたいと思ってここにきました。 アーユルヴェーダでは体質を3つに分けますが私は生まれつきこのピッタが多い体質。 それは個性なので良い面が作用すればいいのですが、火の前にずっといる仕事をしているのと、渡印前に仕事を詰めた事や急に日本が暑くなった事などで、ピッタが上がりすぎて皮膚炎、身体や尿の灼熱感が出ていました。
火は身体の水を蒸発させて乾燥させます。 ピッタは肝臓と関係もあるのでドロドロになった血が皮膚を汚すのです。 弱い部分や締め付けている部分に炎症は起こり易く、私はよく使う指先が赤く熱く痛痒くてボロボロになっていました。 私は頭痛はなかったですが、ひどい偏頭痛になる方もいますね。ピッタの私には冷やすトリートメントが私には選択されます。今回メインとなるピッタを排出する中心処置の前に、前処置としてのこの1週間様々な施術を行います。
牛乳の冷性で神経をクールダウン。クシーラシローダーラ
今私が受けている額にミルクを垂らす施術をクシーラ シロー ダーラと呼びます。 じんわりあったかいミルクを左右に線状に額に同じ速度でゆっくり垂らされると、浸透圧で脳にまで滋養が行き渡り、熱を下げるだけでなく、不眠症、ストレス、不安、うつ病、脱毛、疲労、頭痛などの症状によいとされています。神経系によいので脳が深い休息状態になるそうです。
ここでは瞑想にもよい周波数のインディアンフルートの音楽をかけてくれるので、意識がふわ〜っと宙に浮かぶような気持ちよさです。 ときおり、頭を撫でてくれるのもなんとも気持ちいい。終わった後の感覚としては意識がクリアになった感覚がありました。すっきりして気持ちよく、心が軽い。 神経が滋養されているので、夜は早い時間でも電気を消して目をつぶると即寝です。
そして朝起きると完全に充電された感覚があります。私のベット横の窓からは草を喰む牛さん達を見ることができます。自由に動いて草を食べたストレスのない、原種の牛さんからとれたてのA2ミルクを浴びるなんて、贅沢な施術です。
今日のトリートメント
⚫︎スネーハナ(全身オイル)
⚫︎スウェーダナ(スチーム発汗)
⚫︎ナビバスティ(おへそ) ✖️2日目
⚫︎クシーラダーラ(牛乳を頭に垂らす)✖️2日目
⚫︎アヌアサナバスティ(少量のオイル浣腸)✖️3日目
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そして今日も食事がおいしかった・・!!夕顔の炒め物が秀逸で、とろりとした食感が独特でたまらない。細かくカットしてイエロームングと炒めてあります。パラタはメティ入りでした。
ずっと気になっているのですが、ここのチャパティやパラタが美味しすぎるのです。普通じゃない美味しさです。どうやったってこんなにソフトでさっくりとしたチャパティは食べたことがありません。
次回#2に続きます!次回もお楽しみに。