#2 料理家MOMOさんのインドアーユルヴェーダ治療体験記

京都にある南インド料理教室の講師として有名な「桃草舎」のMOMOさんによる、インドアーユルヴェーダ病院での治療(パンチャカルマ体験日記)#2です。#1の記事はこちら

MOMOさんプロフィール 
桃草舎(とうそうしゃ) 主催: 井上 由貴 / MOMO instagram
異国料理に魅せられ、様々なレストランの厨房に入って働くうちに大好きなハーブや薬草を使うインド料理と出会いのめりこむ。インド料理店で働いたのち、毎年1~2回はインドへ通い、現地の家庭やレストランの厨房などに入って料理修行を続けている。アーユルヴェーダの勉強も続け、インド/日本にてドクターの元学びを深めている。2020年に念願のアトリエを嵐山にオープン。レッスンは月に10回以上開催。登録メンバー数は1,600人以上。南インド料理をはじめとする各地のインド料理、アーユルヴェーダを伝えている。

MOMOさんのパンチャカルマ体験記 前処置編の続き


パンチャカルマ日記 4日目 (前処置)

⁡今日は、2つの施術が追加になりました。ニルハバスティという煎じ液浣腸と、アシュチョータンという目にミルクを入れる施術です。

浣腸には2種類、オイルを少量入れるのと、大量の煎じ液を入れるものがあって、今回のニルハバスティ(カシャーヤバスティ)は煎じ液を700〜800mlほど浣腸するものを指します。今回参加の方全員がこの大と小のバスティがまず処方されました。

⁡(1日目から行われた)オイルを使った少量のバスティが滋養の為だとすると、この大量の煎じ液バスティは対局で浄化の為にあります。これから治療する上で、まず汚れた布から汚れを取って白くするように、このニルハバスティで身体の内部を浄化していくイメージです。(ここでは私たちは分かりやすくビックバスティと呼んでいます) ニルハバスティはオイルマッサージと発汗のトリートメントの後に投与されます。

⁡ニルハ バスティのハーブは急激な腸の蠕動運動が起こらない為、ほとんど痛みはないとされていますが、今回のメンバーの中には数名何回も痛みを伴う排便があったようです。私の場合痛みはなくて、入れてから5分後にはするする〜っと出ました。慢性的なひどい便秘に悩んで参加された方は、この施術の後に4〜5回分くらいの便が出て腸内の物が全て出た感覚があり、生まれて初めての感覚に「天国のよう!!」と顔をキラキラさせていました。

症状の進み方を見ながら治療を決めていくので、今後私が何日間このバスティを繰り返すのか分かりませんが、気持ち良くて何回もやりたいと思うほどの施術です。

煎じ薬の内容は知らされていませんが、体の状態や病気の必要に応じて選ばれていて、ハーブの他に蜂蜜や岩塩が入り、薬草オイルと共に浣腸されます。 ハーブは大腸から吸収されやすいため、直接細胞へ吸収されてヴァータ・ドーシャを鎮め、排便を正常化し、消化と体の代謝を改善するのに役立つそうです。

古典書では、3つのドーシャの中でこのヴァータドーシャ原因の病気が一番多いとされていますから、まずはヴァータからの鎮静が行われるのでしょう。 さらに、ヴァータドーシャは動きを司りますからこれにより、体は栄養素とエネルギーを必要な場所へより効率的に移動できるようになり、同時に油溶性の老廃物の排出が促進されるのだと思います。

ヴァータドーシャの増悪による疾患が主訴の人は、この大と小のバスティを交互に何回も何回も繰り返して行います。3週間ずっと行う人もいるようです。

⁡目にミルクを入れる、アシュチョータン

ミルクを目に入れる施術は初めて経験しましたが、もちろん痛みはなく終わった後は目がひんやりして気持ちがいい。トリートメントルームを出たら、視界が広くなっているのに気がつきました。上下左右に広く見える感じです。頭と目にミルクを注がれて、ふと部屋の外を見ると牛さん達が草をはんでいます。

ありがとうね🐮🙏


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今日のトリートメント
⚫︎スネーハナ(全身オイル)
⚫︎スウェーダナ(スチーム発汗)
⚫︎ナビバスティ(おへそ) ✖️3日目
⚫︎クシーラダーラ(牛乳を頭に垂らす)✖️3日目
⚫︎ニルハバスティ(大量の煎じ液浣腸)✖️1日目
⚫︎アシュチョータン(ミルク点眼)✖️1日目
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そして病院にいながらにして食レポも欠かしませんが、この日の食事も大ヒットでした。

⁡ランチに出たのはリッヂゴードという瓜の煮込みですが、マハラシュトラならではのピーナツとココナツのマサラで煮込んであり、独特な歯応えがたまりません。
サクサクした茄子みたいな感じです。沖縄では作られているみたいですが本州でも栽培出来たらいいのになぁ!!

⁡そしてディナーはティンドラの炊き込みご飯でした!!英語ではアイビーゴードと呼びますが日本語ではなんというのでしょうか?

3〜4センチほどの小さなきゅうりのような見た目ですが、瓜臭さがなくて水分も少ないので煮込みにも適しています。南インドでは炒め物にしてよくバナナリーフミールスに出て来ますし、乾燥させたものを揚げて食べたりします。大好きな野菜だったけど、炊き込みご飯は初めて。なるほどなぁ〜!!こうやって使ってもいいのかぁ!

⁡日本で育てたい野菜のトップテンに入る野菜が2つも1日で出て来て、大興奮の1日でした。


パンチャカルマ日記 5日目 (前処置)

⁡この病院はとても大きな敷地の中にあって、このパンチャカルマセンターほ他に、アーユルヴェーダ製薬工場、普通の西洋医学の病院やアーユルヴェーダ大学、大学生の為の食堂やお寺に牛舎など、色々な建物があります。

⁡そのお寺のひとつがサマディで、そこにはここを建設されたマハラジ(サダナンダ先生のお父様)が永眠されています。

マハラジは生まれながらの聖人で色々な物が見える方だったらしいのですが、何もないこの土地に来た時にここから世界にインド古代の知恵が広がっていく光のビジョンが見えたそうです。

そのサマディに毎日欠かさずお食事を作り続けているのがプラバタイ。70代のおばあさまですが本人も産婦人科医でいらっしゃいました。

⁡そんなプラバタイに今日は本当のギーの作り方を見せてもらいました。ミルクを温めて一晩おき、上に浮いたクリーム(マライ)を取り、そこにヨーグルト菌を入れて発酵させます。

それを木で作られたマダニという棒を使って撹拌していくとバターが取れます。
ここからは日本での作り方と一緒なのですが、バターが震えるくらい美味しかった!日本でもフレッシュなマライの取れるくらい濃いミルクが手に入らないものだろうか。。。

⁡トリートメントは昨日とほぼ変わらず。今日はビックではなくスモールバスティなので余裕です。昼寝してしまうと全てのドーシャが悪化して消化力も落ちる為、こうやって昼間は色々なレクリエーションを病院が提供してくださいます。

⁡体調はすこぶる良くて(だって毎日8時間は寝てる)、ご飯が美味しい毎日です。

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今日のトリートメント
⚫︎スネーハナ(全身オイル)
⚫︎スウェーダナ(スチーム発汗)
⚫︎ナビバスティ(おへそ) ✖️4日目
⚫︎クシーラダーラ(牛乳を頭に垂らす)✖️4日目
⚫︎アヌアサナ(少量の薬用オイル浣腸)✖️4日目
⚫︎アシュチョータン(ミルク点眼)✖️2日目


パンチャカルマ日記6日め (前処置)

ミルク点眼も3日目。最初はびっくりしたけど気持ちいい施術で大好き。 白眼が綺麗になってきていて、サダナンダ先生には赤みが取れたと言われ、今日で終わりになりました。 ⁡

ビックバスティは2回目。浣腸への緊張感もなくなったので、落ち着いて受けられます。 出ちゃいそうで苦しい〜、とか ギュルギュルしてお腹痛い〜、などはなく、 あったかいものを入れてもらって、しばらくしたらスルスル〜って感じで胃のすぐ下からスッキリするから、好きな施術です。

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今日のトリートメント

⚫︎スネーハナ(全身オイル)
⚫︎スウェーダナ(スチーム発汗)
⚫︎ナビバスティ(おへそ) ✖️5日目
⚫︎クシーラダーラ(牛乳を頭に垂らす)✖️5日目
⚫︎ニルハバスティ(大量の煎じ液浣腸)✖️2日目
⚫︎アシュチョータン(ミルク点眼)✖️3日目
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ミルク点眼「アシュチョータン」

ここで受けたアシュチョータンという治療はミルクをコットンに含ませて目に5〜8滴たらすというもの。その後目を洗ったりもしません。

アーユルヴェーダでは身体の生理機能を3つで説明してくれますが、その中のピッタという火の要素が身体に多いと【赤や黄色】の色が身体のあちこちに出るようになります。 ピッタの私はもともとほっぺも赤くてチークはいらないし、赤い炎症が出やすいです。 そして特に目はピッタが多い場所なので症状が出やすいのです。 私はPC仕事を沢山やったり、お酒を飲みすぎた次の日なんて、すぐに目が真っ赤に充血してしまいます。

牛乳は冷性で良質の脂肪を含むのでしっとりと目を滋養し目の疲れを軽減します。ミルクに含まれる脂肪は疲れた目を落ち着かせてリラックスさせ、同時に炎症や腫れを軽減する効果があるそうです。 ギーを目に入れるのもよいですが、より簡単にできるので家でも出来そうです。 これから目が赤くなったら牛乳で洗ってみよう。

さて今日の朝食はチャパティかディルダという無発酵ドーサが定番。
ディルダはいろんな種類の粉で作られていて、ここでよく出されるのは米粉、ラギ、ベサン、ジョワールなど。

マハラシュトラ州の隣のカルナータカ州で食べたニールドーサに近い物があって、北上してもこういうドーサ的なものは食べるんだなーと発見がありました。 ⁡ おやつはアッペという数種類の豆の具なしたこ焼きです! 南インドで言うパニヤラムと似てて、これもびっくり。 タミルではpaniyaram カルナータカではpaddu そしてここマハラシュトラではappe 訛りのようなものか、少しずつ呼び方や材料が変化していくのが興味深いです。 これ、とってもこ美味しかったので、レッスンでやりたいなあ。


パンチャカルマ日記 7日め(前処置)

いよいよ今日から中心処置へ向けて薬用ギーの飲用(スネハパーナ)が始まりました。 ⁡

アーユルヴェーダの浄化療法には、

  1. ヴァマナ(嘔吐療法)
  2. ヴィレーチャナ(下剤療法)
  3. ナスヤ(鼻オイル療法)
  4. バスティ(浣腸療法)
  5. ラクタモクシャナ(採血療法)

という5種類の治療法があるのですが、今回の私の治療のメインはヴィレーチャナ(下剤療法)です。 ⁡

薬草オイルを少しずつ飲んで、身体をオイルでいっぱいにして、身体の隅々に貼り付けているドーシャや老廃物をオイルでからめとり、下剤をかけて一気に身体の外へ出します。 ⁡

今日まで身体の外側からオイルを吸収させて発汗によって代謝をかけてドーシャや老廃物を動かして集めてきました。 更に出やすくする為に薬用ギーを飲んで身体の隅々までドーシャを追いかけてかき集める作業が今日から始まったわけです。 ⁡ 薬用ギーは初日は30ml。 朝イチで飲んで、何時に完全に消化されたかをチェックします。

私が飲んだのはパンチャ ティクタ グルタ。5つの苦い薬草で作ったギーなので、味も相当苦いです。

スネハパーナ

これから毎日1回少しずつギーを増やしていき、身体中にギーが満ちたサインが出るまで飲みます。身体中にギーが満ちたサインとは

⚫︎肌や便がギーがにじみでたようにオイリーになってにおいがする
⚫︎目もオイリーでウルウルになる
⚫︎夕方まで消化されない
⚫︎ギーを見ただけで吐き気がする などがあります。

1日目の今日は30mlで、大さじ2杯だけなので飲むのは余裕でした。 3時間ほどで強い空腹感。お湯を飲んでゲップを促し、ギーの匂いがしなければ消化できてるサインです。 濃い油ものを食べたような感じなのでひたすらゲップは出るので、匂いがなくなったのはすぐに分かります。 ⁡ オイルをたっぷり入れて身体が重くなっているのと、更にギーを飲んだのでこの日はやる気が起こらず、だらだらと過ごしたのでした。


パンチャカルマ日記8日め (前処置)

スネハパーナ(ギーの飲用)2日目。今日は一気に倍以上の70ml。見ると怖気付くので目をつぶって同室のカナちゃんに手伝ってもらって一気に飲みます。 飲みごたえあるわ…。

ここから身体に様々な変化が訪れる。 まず、腸がゴロゴロなりだすとそこから顔、首、肩と順番に赤い発疹が出始める。多分ギーを消化吸収し出してピッタが出てきた模様。 更に急に口内炎もできる。これも典型的なピッタ。 この日は5時間で消化完了してオイルマッサージと発汗だけ受けて更に循環を促します。

この日は何もする気になれず身体が重くてベットでゴロゴロ。メンタルも調子悪くタマス(沈んでる)な感じ。

夕食、部屋で休んでいると急にお腹が痛くなりトイレに行くとギーの香りの白い便が3回も出ました。 すると急に身体が軽くなり、気持ちもシャキーン!! 夜だと言うのにカナちゃんに仕事の話をし始めて、ペラペラと2時間くらい話し続けていました、すごいピッタです。白い便=カパなので、私の中のカパが出た事で重さが取れた模様。 同室のカナちゃんは可哀想に寝不足になりました。 (ごめんね・・・)

白い便とドーシャについて

ドーシャはヴァータ(風)、ピッタ(火)、カパ(水)、と3つあり、身体の中でそれぞれが役割をもって働いています。 それらのバランスが取れていれば人間は健康なのですが、何かのきっかけでバランスが崩れた時に不調が起こります。 ⁡ どのドーシャがバランスを崩してきたのかは、少し学べば症状から読み取ることができますが、1番わかりやすいのは色だと思います。

⁡・ヴァータが増悪した時は黒っぽく暗い色
・ピッタは赤や黄色や緑など
・カパは白

皮膚や排泄物の色など、これらの色がひとつの診断基準になります。 ⁡ 今回、ギー飲用の後に私に起こった身体の変化はまさにこの色で見れば一目瞭然でした。 不思議なのは、1番初めに出た便が白かったこと。 ドクターによるとその時1番悪化したドーシャが出るのであって、人によって色が違うとの事だったので、今日の私の身体にはピッタよりカパが増悪していた事になります。

8日めの食事

この日はギーの消化に時間がかかったので、マウシーがお部屋までお弁当を持ってきてくれました。 お昼はいつもご飯&チャパティ。そしてダルと野菜炒めです。 この日の野菜はカリフラワー。 このカリフラワーが、もうめちゃめちゃ美味しかったです。

この地域の味付けもあると思うんだけど、「え?味の素か醤油入れた?」って言うくらい旨味がすごい。 これを野菜とスパイスだけで作り上げてしまうインド料理って本当にすごい。日本でのカリフラワーの調理法ってなんだろ?みんなグラタンとかスープくらいしか思いつかないのではないでしょうか。

カリフラワーはヤワヤワまで蒸し焼きにするとめちゃんこ旨味が出るし、衣をつけてサクサクに揚げたら肉に劣らぬ存在感だし、なんなら丸ごと焼いたらパーティーの主役になります。 日本でのカリフラワーの地位がもっと上がって欲しいと切に願います。


次回#3に続きます、次回もお楽しみに。

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