#3 料理家MOMOさんのインドアーユルヴェーダ治療体験記

京都にある南インド料理教室の講師として有名な「桃草舎」のMOMOさんによる、インドアーユルヴェーダ病院での治療(パンチャカルマ体験日記)#3です。

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MOMOさんプロフィール 
桃草舎(とうそうしゃ) 主催: 井上 由貴 / MOMO instagram
異国料理に魅せられ、様々なレストランの厨房に入って働くうちに大好きなハーブや薬草を使うインド料理と出会いのめりこむ。インド料理店で働いたのち、毎年1~2回はインドへ通い、現地の家庭やレストランの厨房などに入って料理修行を続けている。アーユルヴェーダの勉強も続け、インド/日本にてドクターの元学びを深めている。2020年に念願のアトリエを嵐山にオープン。レッスンは月に10回以上開催。登録メンバー数は1,600人以上。南インド料理をはじめとする各地のインド料理、アーユルヴェーダを伝えている。

MOMOさんのパンチャカルマ体験記 前処置編-スネハパーナの続き


パンチャカルマ日記 10日目

酸味の話

毎日目まぐるしく身体が変化して、それが全部古典書通りなので楽しくて仕方ありません。 ⁡ スネーハナ(薬用ギーの飲用)3日間を経て、2日間のヴィシュランテ(休息日)に入りました。 この2日間で身体中に染み渡ったギーが毒素を溶かす仕事をしてくれているそうです。 2日間はトリートメントはアヴィヤンガとスウェーダナだけで、他の施術はお休みです。 その後の中心処置へ向けて、嵐の前の静けさです。

この日から、食事にコカムスープがプラスされました。 とても酸っぱい&塩気の強いスープで、目的は私の体内のピッタをあえて増やすことで、出しやすくする事です。 コカムは英語で言うとガルニシア。 日本でもダイエットで流行った時期がありましたよね。 酸っぱいフルーツで、この辺りではドライにしてジュースやスープにします。 ゴアではラッサムの代わりにこのコカムスープがタリーについてきます。

その他、ご飯についてくる辛いチャトニやニンニクも、日本ではピッタをあげてしまうので摂らないようにしていましたが、この2日間は積極的に食べます。 ⁡ この辺りから、お腹が緩くなりピッタが高まっているのを感じます。 でも意外とイライラはせず、「仕事やる気満々です」みたいなモードになって、バリバリとデスクワークが進みます。

旦那さんに電話をしてビデオ通話で1時間の病院ツアーまで行いました。 ⁡ そしてとにかくお腹が空きます。ピッタの熱で消化力が上げ上げなのです。⁡ そして夜ご飯を食べた後辺りから、唾液がレモン味になったのです。 とにかく口の中がびっくりするくらいすっぱい。これもピッタが増えた時の症状です。

アーユルヴェーダでは味は6味〈甘酸塩苦辛渋〉あって、それぞれに役割があります。

この6味のうち、ピッタを上げる味は〈酸塩辛〉これらは火の要素が入っているので、身体を熱くする味と言われています。 これらの味は夏の暑い時、私達の身体の中にある消化の火は、チョロチョロと極弱い火になっているのですが、この火の力を強めてくれる働きもあります。 ⁡ レモンや梅干しの事を考えると唾液が出ますね。

その時、唾液だけでなく体内では消化液も出ています。それが食欲と消化力に繋がります。インドやタイなどの暑い国で酸味を使うのも納得ですね。 ただ、私のように元々火の要素が強い人にとって、これらの味は要注意。 火が燃えすぎると血液を汚すので皮膚炎などが起こりやすくなります。

酸味の中には発酵食品も入ります。 お酢やヨーグルトのように酸味を感じるものから納豆、味醂やお酒など味としては酸味を感じないものも、同様の作用があります。 日本食は発酵食品が多いので取りすぎは注意。 ⁡

今、腸活が流行りプロバイオティクス摂取の為に発酵食品のニーズが高まっていますが、まずは自分の体質を知って、どのタイミングでどれくらいならとって良いのか、などを考慮すると必要があると思います。 腸内フローラを整えたいのであれば菌ばかりに頼るのではなく、菌の餌となるプレバイオティクス(菌の餌)の方が大切かなと個人的には思います。 結局、食事ですね。 ⁡

どんなに身体に有益と言われる食品も、万人によい訳ではなく、どんな季節にどれだけ食べていいかも違います。 その辺りは古代の知恵であるアーユルヴェーダから学んで、うまく現代の栄養学と組み合わせていくのが最強なのではないかと思います。


【パンチャカルマ日記 11日目】 〜悪夢〜 ⁡

ヴィシュランテ(休息日)の2日目は朝から大雨。

昨日から食事にコカムスープがプラスされてピッタ上げ上げ状態で眠ったら悪夢を見ました。 私が日本にいる時に仕事が忙しくなったり、詰めすぎたりすると必ず見る同じ夢。 それは時間や仕事に追われる夢で、あまりにも辛くて目を覚ますのだけど、また眠りに落ちると同じ場面から始まって格闘している。 朝までその繰り返し。 ⁡ 古典書によるとピッタの強い人はこうやって何かと格闘したり激しい夢を見るらしい。 この夢を見るとやり過ぎてるな、っていうひとつの指針になっていたんだけど、まさかインドで治療中にこうなるとは…。

⁡ 唾液は相変わらずレモン味で、動悸も始まる。 多分脈が速くなっている。 目の奥がズーンと熱い感じがして頭痛もあり、顔の赤い発疹も濃くなっています。

これだけ聞くと怖い人もいるかもしれないけど、古典を勉強していると全て順調なのがわかるので全て楽しめる自分がいます。インドで1番と言われる程の先生にお任せしているのだから大丈夫、という安心感もすごくあって、幸せな治療体験です。

⁡ 明日はいよいよ中心処置のヴィレーチャナ。 こうやって排出しやすいように集めたドーシャや毒素を、明日は下剤を飲んで一気に出します。 緊張とワクワクが混ざった気持ちです。

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今日のトリートメント

⚫︎スネーハナ(全身オイル)
⚫︎スウェーダナ(スチーム発汗)

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ヴィシュランテ(休息日)の2日目は朝から大雨。
敷地内に住んでいる犬たちは雨の日は東屋の中でゆっくり過ごしてます。

夢について

ドーシャ(体質)によって、夢にも特徴が出るというのがアーユルヴェーダの古典書に載っています。

ヴァータ(風)体質の人は、空を飛ぶ夢。 私も小さい頃よく飛んでいたなぁ〜。みんなが見るのかと思っていましたが、見ない人もいるということを知りました。飛ぶ高さはヴァータの強さに比例する気がする(私調べ)。

ピッタ(火)体質の人は、カラフルだったり何かと戦ったりする夢。私の場合は時間や仕事と戦う。何かに追いかけられたとしても戦ってしまうのがピッタさん。怖がって逃げてしまうのはヴァーさん。

カパ(水)体質の人は、水に関連したものが出てくるそう。ひんやりつめたいものだったり、水鳥とかハスの花。以前、カパヴァータの人が「床から10センチ位の超低い場所を低速で飛ぶ夢を見る」と言っていたのが興味深い。

みなさんはどんな夢をよく見ますか? よく見る夢と、その時の体調や生活状況をメモしておくと、ドーシャとの繋がりがきっと見えてくると思います。


いよいよ中心処置、ヴィレーチャナへ!


【パンチャカルマ日記 12日目】 〜ヴィレーチャナ①〜

ついにこの日が来ました。 中心処置のヴィレーチャナ(下剤療法)です。いよいよ下剤を飲む日。

朝ごはんは酸っぱいスープのみ。 ギリギリ前までピッタを上げ上げにするのね…。しかも今までで1番酸っぱい…。 ⁡ スープを飲んだらオイルトリートメントと発汗。そしてヴィレーチャナルームへ移動。 ⁡ この部屋でまず、よい下痢が起こりますように、治療が上手く進みますように、とドクター達とプージャ(お祈り)が行われます。

そしていよいよ、下剤の登場です。 この黒い液体には、ブラックレーズンにハーブやひまし油などが入っているらしく味は思ったより悪くありません。 一気に飲んで、1時間後から始まるまで待機です。それまでは歩いて消化を促進するよう言われて部屋の中をうろうろしました。 ⁡

ヴィレーチャナ用の下剤

ヴィレーチャナ②

1時間ちょいすると、「きた!」と分かりトイレへ。お腹の痛みはなくてスルスルと出る感じ。 これが5分後、10分後、20分後…と続きます。 だいたい10回は起こるらしいので、時間や内容を記録します。 結局この日は、朝10時から夜19時過ぎまでかけて10回の衝動がありました。

⁡ 出てくるものと体感とがドラマティックで、 私が今回体験したかった、「ドーシャを目で見る」という事が体験できた日でした。

ドーシャは身体の中で生理機能として働いているので物質性はないですが、パンチャカルマではこうやって「ドーシャにまみれた老廃物」として目で見る事ができるのです。 ドーシャは古典書通りの色と様子で、それによって身体と心がこんなにも変わるという体験は強烈でした。身体はクタクタだったけれど、興奮して夜はなかなか寝つけませんでした。

老廃物に現れるドーシャの特徴

(排泄物の話になるので苦手な方はスルーしてください。)

ヴィレーチャナ前後で私の中から出てきたものたちはいろんな色をしていて、すでにここでも書いたようにそれはドーシャの色なので、今何が出たのかがはっきりと目で分かりました。

私はギーを飲んでからの2日間はまず白い、カパをまとったものが出ました。 カパは重い性質なので、それらが出た瞬間から身体と心が軽くなるのをはっきりと感じました。

下剤を飲んだ後は、最初に出たのは真っ黒なヴァータ。私の体質はピッタヴァータなのでこれも相当たまっている様子。 ヴァータは7回も出て、7時間後の8回目にやっと色が変わって黄色が出てきました。 黄色はピッタの色なので「これは!」と思ってドクターに見せると、(ヴィレーチャナ中の排泄物は全部ドクターに見せる)確かにこれが「おしるし」だったようです。

朝から出し続けているのでほとんど出ないのだけど、こんな少量なのに黄色を出した後は身体から熱が抜けた感覚がありました。 さらにその後、緑色に変化。これもピッタの色で、ドクターはこれを見て私のヴィレーチャナは終わったと伝えました。

何がどの順番で出るかは人それぞれ。 本処置の前に、スネハパーナ(ギー飲用)と酸っぱいスープの準備段階でピッタが身体からあふれてしまい、下剤を飲む前に下痢が始まってしまった人もいるらしいです。 私はとても分かりやすい形で綺麗にドーシャを排出できた模様。

口からドーシャを吐き出す「ヴァマナ」という治療は乾季に行うものなので、雨季の今はやる人はいなかったけれど、ヴァマナでもカパやピッタを出す事ができます。 その場合も、白いネバネバしたものが最初に出て(カパ)、次に熱いオレンジ色(ピッタ)が出たら完了。 カパピッタの人がやったら、すっきりするんだろうな。どちらにしてもかなり体力を使う治療なので、高齢者や病気で弱っている人には向かないので、「いつかパンチャカルマに」と思っている方がいたら、「いつか」ではなく「出来るだけ早く」をお勧めします。


【パンチャカルマ日記 15日目】 〜食上げ期〜

下剤を飲んだ時から私の食事はかなり制限されました。 下剤を飲んだ事で胃腸にあった消化の火は消えているので、焚き火と同じように消えかかっている炎にいきなり大きな薪を入れる事は出来ないからです。 当然、肌からオイルを経皮吸収するトリートメントもなしです。ひたすら食事を制限する事で身体を元に戻す治療が3日間続きます。

今思ったらこの治療が、食いしん坊の私にとって1番辛かったかも…

⁡ ヴィレーチャナ当日はユーシャという緑豆を煮た上澄みのサラサラしたスープのみ。 緑豆は消化に軽いだけでなく、消化の火そのものを上げてくれる薬みたいな力もあるスーパーフード。

たった1杯のユーシャが5〜6時間も消化できないほどでした。 ⁡ 2日目になると、緑豆そのものが入ったスープになります。もぐもぐ出来るのが嬉しい。1日で5杯のスープ。 ⁡お昼ご飯は、やっと油入り。ギーでクミンシードがテンパリングしてあります。この少量のギーですら、昨日までの私には消化できない重さだったんだなぁ。 夜になるとスープにカレーリーフも追加。ああ、いい香り…

3日目からやっと、ここに米が入ったキチュリというお粥になりました。もう嬉しすぎ。やっとお腹が満たされました。

⁡普段どれだけ重いものを食べて、胃腸に負担をかけていたのかを思い知った3日間でした。
身体も心も軽くて整いました!
明日からトリートメント再開が楽しみすぎます。

コロナに緑豆スープ

今回の治療で私が食べた緑豆スープですが、身体が弱った時には積極的に取り入れたい食療法ですね。

現在(日記を記したのは2024/8/5)日本ではコロナが流行っているらしいですがコロナの時こそ、この緑豆スープを取り入れてほしいと思います。 タンパク質も取れるし、コロナで弱った身体に速やかに吸収され、さらに消化力を復活させてくれる素晴らしい食べ物です。

⚫︎作り方⚫︎

皮付きの緑豆をさっと洗って、たっぷりの水に一晩浸けます。
次の日、水を切ってお鍋に移し豆の4〜5倍のお水と一緒に20〜30分煮るだけです。
緑豆がホロリと潰れてきたら塩を整えて出来上がり。 塩は岩塩がよいです。お水の量は足りなければ途中で足せば良いし計る必要もありません。

発熱中は、食事は取らない方がいいので、どうしてもお腹が空いたらこのスープの上澄みだけを飲みます。 熱が下がったら徐々に、豆も一緒に食べて、十分に消化力が戻ったら、このスープにご飯を入れておじやにしたら食べると身体の回復と共に消化力も強化されるでしょう。

発熱の時にアイスクリームやフルーツを食べる習慣がある人もいるかもしれませんが、回復を遅らせているだけなので要注意です⚠️

次回#4に続きます、次回もお楽しみに。

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