#4 完結編 -料理家MOMOさんのインドアーユルヴェーダ治療体験記

京都にある南インド料理教室の講師として有名な「桃草舎」のMOMOさんによる、インドアーユルヴェーダ病院での治療(パンチャカルマ体験日記)#3です。

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MOMOさんプロフィール 
桃草舎(とうそうしゃ) 主催: 井上 由貴 / MOMO instagram
異国料理に魅せられ、様々なレストランの厨房に入って働くうちに大好きなハーブや薬草を使うインド料理と出会いのめりこむ。インド料理店で働いたのち、毎年1~2回はインドへ通い、現地の家庭やレストランの厨房などに入って料理修行を続けている。アーユルヴェーダの勉強も続け、インド/日本にてドクターの元学びを深めている。2020年に念願のアトリエを嵐山にオープン。レッスンは月に10回以上開催。登録メンバー数は1,600人以上。南インド料理をはじめとする各地のインド料理、アーユルヴェーダを伝えている。

MOMOさんのパンチャカルマ体験記 後処置編


【パンチャカルマ日記 16日目】

滋養期の始まり

体内から根こそぎ毒素を取り出す中心処置、そしてその後の食養生3日間を経て、私の身体は真っ白に洗った布のような状態になりました。 消化力も正常に戻り、ここからは身体に必要なものを入れていく【滋養の期間】が始まります。 ⁡

私たちは身体が不調になると「何を摂取すればよいか」ばかりに目がいきますが、一旦クリアにしてからでないと良いものですら毒になることもあります。

滋養する性質のものは基本重いので消化力も整っていなければなりません。 ここまで2週間かけて、この滋養のハーブやオイル等を消化吸収できる身体に整えて来たわけです。 ⁡ トリートメントには今日からカシェルカ・バスティという背骨にオイルを溜めおく施術が始まりました。 その後もオイルやミルクを全身に満たし、更に発汗の後、ベットに戻っていよいよ「ブルハナ・バスティ」の処置が始まります

ブルハナ=滋養、という意味で、ミルクや薬用オイル、薬草煎じ液などを混ぜた温かい薬液を100mlほど大腸に直接入れていきます。 浣腸が終わると吸収しやすいように腰の辺りをポンポン、とドクターが叩いてくれます。

「じゃあね、また明日!」 と、ドクターとセラピストさんが帰って行き、1人で温かいお腹の感覚を味わっていると、急に今まで感じたことのない感覚におそわれました。 ⁡ 文章にすると相当に陳腐な感じになってしまうので、ここではあまり詳しく書くのは略しますが、「愛」みたいなものに包まれて「全てが満ちて」「幸せ」「感謝」みたいな感情が一気に溢れ出して号泣してしまったのです。

⁡ 今までいかにエゴに振り回されて生きて来たか、なんでここに来たのか、これから健康な身体と心を使ってどう生きるのか、みたいな事が一気に心に溢れ出して、こんな感覚になったのは生まれて初めてだし、今まで世界観がガラリと変わるような体験でした。 ⁡ この日は、ルームメイトのカナちゃんが帰って来ても感情が止まらず、しばらく窓の外を見ながら「幸せなの」と言って泣いていたのでした。

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今日のトリートメント

⚫︎スネーハナ(全身オイル)
⚫︎ナビ・バスティ(おへそ)✖️7日目
⚫︎カシェルカ・バスティ(背骨)✖️1日目
⚫︎クシーラ・シローダーラ(牛乳を頭にたらす)✖️7日目
⚫︎スウェーダナ(スチーム発汗)
⚫︎ブルハナ・バスティ(滋養のミルク浣腸)

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【パンチャカルマ日記 18日目】

サダ先生の回診

朝起きて鏡を見ると、顔が白い! 確か下剤を飲むまでは赤い発疹があったし、ほっぺももっと赤かった。 一緒に入院している仲間にも 「ももちゃん、肌が白くなってピカピカ!」 と褒めてもらえる。 毎日会っていても気がついてもらえるほど、劇的に肌の状態が良くなったのを感じます。 ⁡

滋養期間になってから、今日は初めてサダナンダ先生の問診。 先生のお部屋に入ると、先生は私の顔を見るなり 「今ハッピーですね?そして身体が軽くて、エネルギッシュな気持ちですね?」 と、ぽんぽんと私の状態を言い当てられました。 身体が軽いし、ずっと幸せで満ち足りているのはもちろん、ポジティブでやる気に満ちています。

ただ、気になるのは今朝から急に舌苔が分厚くなった事と、自分の体臭に敏感になっている事。 オイルを入れ続けているのと、滋養の浣腸を全て吸収しているので、身体が消化しきれていないのかもしれません。 ⁡ するとその場でサダナンダ先生が 「では明日からウドワルタナ。ハーブの内容はアムラとチャンダナと…」 と、処置を追加してくれたのでした。

ウドワルタナ!!ハーブの粉で身体を擦る、私の大好きな処置です。 ピッタの私がここでウドワルタナをやってもらえるなんて思ってなかったので嬉しい。(カパさんにやるイメージでした)

しかも先生、アムラとチャンダナ(白檀)と…って言ってた?(あとは聞き取れなかった) ピッタ用ハーブの処方でウドワルタナしてくれるなんて贅沢〜!と小躍りで喜ぶ私です。 ⁡ こうやって、必要であれば様々な処置を追加しながら治療は進みます。

主治医の先生は毎日身体を触って診てくれて、サダナンダ大先生は週に何回かは必ず脈診をして治療が順調に進んでいるかを診てくださいます。 ⁡

自分の治療が正しい方向に進んでいると確信できる事。 アーユルヴェーダを信じられる事。 先生方を信用して全てお任せできる事。 ⁡ これらが治療によい効果をもたらしているのは間違いありません。この病院を選んで本当に良かった、と滞在中何回も思いました。

⁡ 午後はDr.プラバによるクッキングクラス。 暇になってしまう午後の時間に様々なアクティビティも用意してくれます。(参加自由)この日は厚焼き雑穀パン「タリピート」。 充実の1日でした。

ウドワルタナ

ウドワルタナは、ハーブパウダーを使ったドライパウダーマッサージの事で、通常薬用パウダーを体に上向きのストロークで擦り込んで行います。 ⁡ まずは薬用オイルを身体に擦り込み、その後ハーブパウダーを塗ります。 ハーブパウダーは人によって様々なハーブが選ばれます。

私の場合は、肌が弱いのでハーブパウダーを水で溶いて固めのペーストにして使っていました。 身体の末端から心臓に向けて、毛の流れに逆らって強い力で下から上に全身を擦り上げます。 ⁡

ウドワルタナは、血液循環の改善、余分な脂肪とセルライトの減少、筋肉の調子を整える、肌の質感を高める、全体的な解毒を促進するなどがあります。

日本でドクターに習った時は【カパとヴァータを下げるのに良く、特に肥満に効果的】と教えてもらいました。 私がドクターにウドワルタナを処方されて小躍りしたのは、「肌がキレイになって痩せる」と端的に思ったからですね。

今回、私は舌苔と体臭を訴えました。どちらも消化不良を表します。 ウドワルタナは身体に熱を入れるので消化を促進してくれます。

今処置されている滋養の浣腸は、性質としては重性のものが多く入っているので、一緒に入院している人達を見ると、この治療をしている間は食欲が落ちる人が多く診られました。人によっては浣腸の後に便意が起こってある程度排出する人も多いようでしたが、私の場合は何回やっても全て吸収しました。

それだけ重いものを大腸から直接吸収し、皮膚からも毎日オイルを入れているので、消化しきれなくなったのだと思います。 ⁡ ここで、ドクターは浣腸をストップするのではなく、ウドワルタナの処方! なるほどーと思いました。

しばらく日々のトリートメントとして、ウドワルタナも続きます。贅沢!! 中心処置が終わってからも、まだまだ身体は変化するし、治療としてやれる事は沢山あり、この病院は全力でそれをしてくれます。

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今日のトリートメント

⚫︎スネーハナ(全身オイル)
⚫︎カシェルカ・バスティ(背骨)✖️3日目
⚫︎スウェーダナ(スチーム発汗)
⚫︎ブルハナ・バスティ(滋養のミルク浣腸)✖️2日目

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パンチャカルマ 食レポ編

リッヂゴードのシリシリ炒め

以前も食レポに登場したリッヂゴード。
日本名は「十角(トカド)へちま」。
名前の通り、カクカクした角のあるヘチマ(写真3枚目)で、この皮は剥いて使います。
火入れすると茄子をもっとシャキシャキさせたような食感になり、瓜臭さもなくすこぶる旨い。

南インドではココナツと煮込んだり、チャトニにしたりする事が多いけど、ここ西インドではバッジという炒め物にしたり、ココナツピーナツマサラで煮込んだりする事が多い模様。
病院でも何回か登場し、日本人入院患者の心を鷲掴みにしていました。

今までリッヂゴードって、ここまで美味しい印象なかったんですが、この病院の味付けなのか、ゴーダマサラと相性が良いのか、とにかく美味しいんです。(語彙力)
煮込みも美味しかったけど、写真1〜2枚目のバッジ(炒め物)も最高でした。
シリシリにしてから炒めてあるんですが、シャキシャキ感は変わらず、そしてとろり。
味付けは至極シンプル。これも和食の中に置いても違和感なく食べられるだろうな。

なんで日本で売ってないんだろうなーと検索したらメルカリにありました。もちろん買った。
日本もこれだけ夏が暑くなったのだから、トカドヘチマなんて簡単に栽培できるはず。
この美味しさ広めたいなー。


【パンチャカルマ日記 退院】

3週間に渡るパンチャカルマが終わりましたが、私は生理予定日として予備日を多めに取ってあったので治療日が余りました。 こういう場合、治療の続行をするか終わりにするかドクターが聞いてくださいます。 一緒に入院した仲間達は「もう充分な感じがする!」と、終わりにした方が多かったですが、私はどうせいるならやれる事はやりたい!という事で続行し、約1ヶ月に渡り様々な治療を行って頂きました。

最後の1週間は滋養浣腸のハーブの内容が変わり、身体と神経を強くする内容になっていました。 最終週は、オイルにウドワルタナ(ハーブペースト摩擦)に、背骨のバスティに…とかなり色々なトリートメントがあり、長時間セラピストさん達も頑張って尽くしてくれました。 インドでアーユルヴェーダのオイルトリートメントを受けた事は何回かありますが、私の経験ではこの病院ほど黙々と丁寧にやってくれた所はありませんでした。

ここまでやると、肌も髪もウルウルになって体も心も充実し、早く日本に帰って仕事したいと思うようになりました。 でも油断は禁物。 いま私は産まれたてのようにピカピカになっているので、外の刺激にとても敏感な身体になっているからです。 消化力もまだ万全ではない為、急に普通の食事に戻すと身体への負担が心配されます。

⁡ 退院の日は、長旅に備えて病院がお弁当を持たせてくれました。ホカホカのタリピート・・・!お母さん…!!と泣きそうになりながらの退院でした。 ⁡ 帰りは、五感が敏感になっているので病院の外へ出た途端に、光や音、匂いが強すぎてとても疲れました。 私はそのままデリー空港へ向かい帰国だったのですが、病院の外ではあまり食べられるものがなく、このお弁当がしみじみありがたかった。。。

パンチャカルマの後は、とにかく急に動けません。インドに来たからと言って、買い物やレストランなんて行ったら熱を出してしまったという話もよく聞きましたし、おとなしくすぐに帰国するのがいいと思います。

そしてすぐに仕事をするのは不可能に近いです。 食事はパンチャカルマを受けた日数と同じ日数を目安にベジで軽いものにして身体を慣らしていくのがよいと聞きました。 ここからは自分で全てやらなければなりません。 ある意味、ここからが1番大変なのかもしれません。

⁡ 次は最終、退院その後の記録で終わりにしたいと思います。 ⁡⁡


【パンチャカルマ日記 帰国後】

帰国して1ヶ月が経ちました。日常に戻って初めて身体や心の変化に気がつく事の多い1ヶ月でした。
「健康ってこういう事!!」
と初めて分かった、そんな気分です。生まれ変わったみたい。

帰ってからしばらくは五感の敏感さは続きました。

特に私は嗅覚と視覚が鋭くなっていて、世の中はこんなにも匂いと人工的な光に満ちているのかとびっくりしました。自宅でも部屋ごと全然匂いが違うし、やたら色々な物の匂いが気になって洗濯掃除ばかりしていました。スーパーに行ったら光が目の奥に差し込んできて急な冷房で疲れて寝込んでしまった事も。⁡


そして私的に1番大きく変わった所はマインド。
ヴァータが出て行ったお陰で頭のモヤが取れたような感じがします。
今まで「良くないと分かっちゃいるけどやめられない」と感じていたお酒、甘い物、食べ過ぎ、タスクの詰め込みすぎなどを完全にコントロール出来るようになりました。


そして、ピッタ過剰の症状である「我慢できないほどの強い空腹」「皮膚炎」もなくなりました。

眠り、寝起き、排便、食欲全てが完璧と感じます。


心身が軽くなって髪を切りたくなり、腰まであった髪の毛を生まれて初めてショートにしました🥹
いつかやろうと思っていたアシュタンガヨガも始めて、朝6時にシャラに通う生活になりました。
体重は3〜4キロ減りましたが、脂肪が落ちたというより不要なものが全て落ちた感覚で、服がスカスカに。

正直、ここまで変われると思っていなかったです。

料理の仕事をしていますが、料理に対する気持ちも少し変わってきました。

ここまで変われたのは BSDT@bsdt.in (instagramへ)のドクターはじめスタッフみなさまのお陰であり、ここへ繋いで下さったSatvik @satvikayurveda 真紀子先生、そして今回通訳だけでなく献身的に私たちをサポートして下さったVedabeejam @vedabeejam チコさんのお陰です。
心から感謝します。

⁡ここまで、記録のために残した日記でしたが、長い間読んで下さったみなさま、ありがとうございました。


MOMOさんが今回滞在したB.S.D.T.’s Ayurved Hospital & Research Centreでのパンチャカルマに興味があり、通訳のサポートなどを受けたい方は、下記にお問い合わせください

サトヴィックアーユルヴェーダスクール
病院の院長、Drサダナンダに師事されている佐藤真紀子先生が、団体でのパンチャカルマ体験プログラムを定期的に開催されています

NPO法人ヴェーダビージャム
個人や少人数のご友人、ご家族同士でパンチャカルマを体験したい方向けのサポートを行なっています


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